- Bangladesh Texstyle / バングラデシュ
- 2023年2月20日
Nakshi kantha女性たちが支える伝統的な刺繍技術『ノクシカタ』①
今回の旅行本来の目的である『ノクシカタ』の刺繍が施されている布の入手と村の女性たちと一緒にワークショップ交流をするための訪問のはじまりです。最初はジョソール (Jashore) から少し西へ行ったジッコルガサ (Jhikorgacha) という村です。
「ノクシカタ (ノクシ・カンタ / Nakshi kantha)」について
ノクシカタ(ノクシ・カンタ)はインドを含めたベンガル地方で古くから作られてきたカンタと呼ばれる刺し子の古布を商品化した手刺繍の布製品です。「模様」や「柄」「パターン」を意味する『ノクシ』と「刺し子のふとん」を意味する『カンタ』を合わせた単語です。
『カンタ』はもともと着古して柔らかくなったサリーやドーティ (ヒンドゥー教の男性が着用する腰巻布) やルンギ (イスラム教の男性が着用する腰巻布) などの薄い木綿布を数枚重ね、その上に全面びっしりと白い糸で『波縫い』を施すことで布を丈夫にしたもので、それを敷布や掛けふとんとして家族が生活の中で私的に使っていたそうです。日本の東北地方の刺し子と、とてもよく似ています。これは手に入りにくい大切な布を丈夫に補強「つぎ布」などを施して、布をリサイクルして使うこともありましたが、貧しい人々の間で使われる『ボロ布』という意味もあったようです。
バングラデシュは1971年の独立後、厳しい経済、不安定な政治、自然災害下におかれた人々の生活を改善するため、国内外の組織によって開発援助が行なわれるようになりました。特に1980年代に入ってから、NGOなどの技術訓練を受けた女性たちがこの刺繍布を手工芸品として作るようになり、賃金を得て商品化されたものを『ノクシカタ』と呼ぶようになったようです
参考文献:「バングラデシュを知るための66章」『16章 - 女性の技術が支えるNGOアート』株式会社 明石書店
ノクシカタの作品
このジッコルガサ村の『ノクシカタ』の特徴は日本でいう「波縫い」である『カンタステッチ』と呼ばれる「ランニングステッチ」のみで刺繍されています。柄の全面を埋めつくす「サテンステッチ」ではなく、折り返し時に見えるステッチ巾の半分くらいをずらしていく感じでしょうか。結果として糸が出ていない地布が斜めの柄のように残って見えるのです。実際は高い技術のいらないとても単純な縫い方ですが、この『ステッチのずらし』によって高度な刺繍に見せている様な気がします。
- 金糸で刺繍された布は豪華に見える
- カラフルな色でのノクシカンタ
- 単色だが大物は豪華に見える
- 2枚目の写真を制作中
- デザインはトレシングペーパーの型紙を写し取る
- 小さい布だがキレイに刺繍されている
- 全て「波縫い」だけで刺繍されている
- カラフルに刺繍された大作
自宅でワークショップの続きを完成
子供のころは手芸好きだったのでいろいろな種類の制作にハマっていたのですが、フリーな刺繍をやったのは中学生ころ以来。数年前にクロスステッチをお願いされて制作したけれど、やり始めると夢中になってしまう悪い癖です。糸までいただいたので、やっぱりとりかからないと申し訳ないです。
ひと柄だけですが、帰宅してからすぐに3日くらいかけて完成させました。「波縫い」だけなので制作自体はとても簡単でしたが、刺繍用ではない細い糸を「5本あわせて針に通して...」という部分が老眼が進んだ私には一番大変でした。
- こんな感じで刺繍している様子を見せてくれた。「指ぬき」がキルトでカワイイ
- 同行の方々もこんな感じでワークショップに参加
- いただいた青花液で下絵を描いた布
- この柄を刺繍してみる
- 4色の糸をいただいた。刺繍糸ではないので光沢はあるが極細
- 訪問した村のイメージで制作。出来上がってから茶色のバックステッチ部分はイメージが違うと気づいた
村の様子
- 村の家屋はレンガとトタン板で作られている。この村は比較的ゴミが少なくキレイ
- 収穫したジャガイモを選別しているおじいさん。
- 歩き回っているカラフルな鳥。ノバリケン (Muscovy duck)
- アングロ ヌビアン (Anglo-Nubian) という種の山羊
- 指導してくれた女性。赤ちゃんの山羊を抱いて「写真を撮って欲しい」とお願いされた
- 村には動物も鳥も人間も赤ちゃんがたくさんいるという風景