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  • 2022年6月21日

Arafune Cold Storage自然の冷風を利用して絹の大衆化に貢献した「荒船風穴」

「富岡製糸場と絹産業遺産群」として2014年にユネスコの世界文化遺産に、その絹産業遺産群のひとつとして「荒船風穴」も登録されました。
荒船風穴は、明治から昭和初期に下仁田町南野牧字屋敷地区の西側で崩落岩堆積層の下部の隙間から吹き出す天然の冷風を利用して生糸の原料となる「蚕紙(蚕蛾が卵を産みつけた台紙)」を貯蔵した遺跡です。
合計3基の貯蔵庫と番舎(管理棟)などで構成され、強力な自然を最大限に利用しており、貯蔵能力は国内最大規模だったようです。


江戸時代までは、ほとんどの蚕の孵化は春から夏に向けて、年に1回桑の葉の芽吹きに合わせて養蚕を行ない、6月末に産卵させるのが基本的な年間サイクルでした。しかし、明治に入ると卵の段階で冷蔵保存をすることで孵化をコントロールできることがわかり、その温度管理下で年に3回養蚕をすることができるようになったそうです。
12月から2月までの間に業者が「蚕紙」をこの貯蔵施設に送り、冷気が安定する3月から9月までの間この風穴で貯蔵します。そして、その間に業者の要望に応じて随時出穴し、業者に返送していたようです。さしずめ今の冷蔵倉庫業といったところでしょうか。

  • 世界文化遺産に登録されたという記念碑
  • 1号風穴、2号風穴の石積み跡
  • 1号風穴の遺跡
  • 2号風穴の遺跡
  • 2号風穴吹き出し温湿度計
  • 2号風穴の計測中の温度は外気温21℃、吹き出し口から0℃の風が出ている。ここ数日は6月だが市内では35℃を超える日が連続していたので、午前中とはいえ外気が21℃というのも特記すべきかもしれません。
  • 大正時代の周辺想像図パネル
  • 風穴周辺の平面図(等高線)パネル
  • 気になるマムシグサ
  • 赤岩で見せていただいた蚕種紙と紙桝(かみます)

この場所はかなりの山岳部と思われがちですが、東京・埼玉から長野に向かう旧中山道(国道18号)の脇街道(国道254号)で比較的交通量の多い街道からほんの数キロの場所です。施設内では運搬に馬を利用したなどの記述もありますが「取引先が全国43道府県に及んだ」というように取引を全国展開するにはなんの問題もない交通網の場所だったように思います。ここから少し上の神津牧場は明治20年に開業の我が国最古の洋式牧場ということや、1880年代には避暑地・別荘地として開拓された軽井沢とはかなり近いなどということも気に留めて置く必要があるかもしれません。

2014年に世界遺産に登録され、週末はかなり混んでいると聞いていてなかなか見学のために足を向けることが出来ませんでした。それに以前見学した姉や友人の話によると「上の神津牧場(こうづぼくじょう)の駐車場からかなり悪路を歩く」と聞いてきたので、よけい足が遠のいていました。ですから、今回は急勾配を長く歩くのを覚悟しての参加でした。しかし、ありがたいことにエリア乗り入れ許可のある「上信ハイヤー」は施設のゲート前で下車、数十歩で風穴着での観光でした。歩くのが苦手という方には費用はかかりますが、絶対おススメの観光です。

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