- Texstyle / Silk Fuzz
- 2024年7月17日
Cocoon Fuzz Spinning繭(マユ)の毛羽(ケバ)を紡いでみる①【精練】
カイコがマユへと変化する時、一番最初に自分の体を何かに固定するために吐く糸を『毛羽(ケバ)』といいます。
2016年、17年と3回の市民養蚕に参加し、自宅でカイコを200頭ずつ育てた時にそのワタ状のケバとはじめて出会いました。蔟(マブシ)から繭を取り外して市に納める前に、表面のケバを取り除いてキレイにします。
取ったケバは200個のまゆで約4g弱ほどでした。
『これどうするの?』という問いに「廃棄してください」とのこと。学生時代に『羊毛(ウール)の原毛紡ぎ』を好んで制作していた私は、この「ワタ状の物体」=「捨てちゃう」という言葉にとても反応してしまいました。「これもシルクなんじゃない?」と考えても、たったの4gのワタ状のものを眺めながら「『紡いで糸にする』にはどのくらいのカイコが必要なのか?」と...そのまま何年も経ってしまいました。
- 2017年の春蚕に桑で育てたマユと毛羽
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このところ時間ができてまた染織活動を始める中で「マユのケバから何かできないかな?」と思い、まず「養蚕農家さんはこれをどうしているのかな?」「捨てちゃうのかな?」と疑問。
「カイコのフンが欲しい」と相談していた『富岡シルク推進機構』さんに、「繭(マユ)の毛羽も欲しい」とお願いしてみました。実際、ケバは石鹸や化粧品、食品に混ぜるなどシルク タンパク質として使うとのことで、シルク糸にはならないが全部が廃棄されるわけではないようです。
カイコ春蚕の荷受けを実施している中で「毛羽(けば)も用意できた」とご連絡をいただき、さっそく入手できました。
毛羽にはたくさんのカイコの糞や汚れが含まれていました。それを取り除くとふかふかな少々粘り気があるワタ状のものとなりました。
たぶん普通思い描く糸紡ぐ工程は
「ハンドカーダー掛け」≫「紡ぐ」≫「精練」≫「染める」というが流れだと思いますが、
「精練」≫「染める」≫「ハンドカーダー掛け」≫「紡ぐ」
という流れで進めたいと思っています
- フンが含まれる状態の毛羽
- フンを取り除いた毛羽
精練① ソーダ灰 《アルカリ精練》
一般的に絹糸で使われる【ソーダ灰】で高温の精練。85%に減量
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精練材
- ソーダ灰: 2g
- 水: 2000cc
時間
- 1時間
温度
- 90℃~。高温で
- 水洗い後、広げて乾燥
- ハンドカーダー後。ワタ状の中にネップ(ダマ)が見える
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とても良く精練でき、キレイになっているが、繊維全体が少々粘り気がでるほど劣化している。と感じる。
紡いで糸にしてみるとネップが予想以上に多く気になる
精練② プローゼK 《酵素精練》
「低温で精練すればネップができないかも」という考えから酵素精練してみる。70%に減量
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精練材
- プローゼK: 10g ※田中直染料店
- 水: 2000cc
時間
- 1時間
温度
- 50℃~60℃
- 水洗い後、広げて乾燥
- 少々精練不足な感じがする。ハンドカーダー後はやはりワタ状の中にネップが見える。
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全体的に精練不足でセリシン残っている感じで「ハンドカーダー掛け」がしにくく、繊維が切断される感じがする。
汚れはキレイになっているが、紡いで糸にしてみるとやはりネップが気になる
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精練③ 湯通し
薬品を使った精練ではないが、お湯で煮沸してみる。
汚れは落ちたが乾燥させるとロウ状のセリシンが固まってしまい全くワタ状にならない。「ハンドカーダー掛け」ができないので紡ぐまでに至らなかった時間
- 1時間
温度
- 90℃~
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精練④ ソーダ灰 + WSソープ ニュー《採用予定》
【ソーダ灰】での適度な高温精練で、繊維をできるだけ傷めない方法を考える。強力精練洗浄剤ということで入手した【WSソープ ニュー】を少々使用。乾燥過程で何度も広げて繊維が固まらないようにする。60%に減量
精練材
- ソーダ灰: 2g
- WSソープ ニュー: 2cc ※田中直染料店
- 水: 2000cc
時間
- 1時間30分
時間
- ~90℃。煮沸させない