• Texstyle / Dyeing
  • 2023年7月4日

Benibana Dyeing河北町の「紅餅(べにもち)」で『べに花染め』

先月、桐生の「千美工房」さんで座繰りや染色をやってみて、染織の体験スイッチが入ってしまいました。
学生時代に染織を学んでいたので「年を取ったら趣味で織物をしたらいいのに」と身近な人に言われ続けていましたが、かなり近代的職種に従事していたこともあり「たぶんやらないよ!」と長い間答えていたのです。しかし、いざ仕事をやめて自分の時間が持てるようになってみると【染織というもの】がかなり身近にあるのを実感したのです。学生時代は「ウール」ばかり【羊】を好んで制作をしていたので、現在『絹遺産群』となった地域で必要とされている「シルク」【蚕】についての知識がほとんど身についていないことに気づかされました。『真綿はシルク』ということさえも忘れて、数年前に思い出したレベルです。

天蚕を育てている「登坂工房」さんから天蚕の糞を入手したので、そちらの「糞染め」を先にトライするつもりで進めていたのですが、染色のために用意しなければならない物が多くあり、まずは大阪のSWIさんから山形のお土産としていただいた『べに餅』キットでの染めをやってみることにしました。

  • 材料・薬品

    1. べに餅:河北べに花会産(10g)
    2. 炭酸カリウム:染めキットに同梱
    3. クエン酸:100均で購入
    4. ミョウバン:漬物用で家にある物を使用
    5. 米酢:家にある物を使用

    染材(精錬した絹糸)

    1. 緒糸:20g
    2. 真綿糸:10g

    道具

    1. ホーロー鍋・不織布ネット・加温設備・温度計・保存用ペットボトル

染液の抽出

キットに付いているマニュアル通りに実施することに。【べに餅: 20g】での進め方ですが、まずは半分の10gでやってみることにします。

  • 《べに花染め》のキット:紅餅、炭酸カリウム、染色マニュアル
  • 【べに餅: 10g】を不織布の袋に入れて【水: 750cc】に浸し24時間置く《黄染め用1番液》
  • 最初に抽出した黄色い1番液①をペットボトルに取り、【水: 1500cc】に浸してあと2回、2日間抽出を繰り返す
  • 2回の抽出液①とザルに取り出したべに餅
  • 【水: 500cc】に【細かくしたべに餅】と【水に溶いた炭酸カリウム: 2g】を入れ3時間放置《紅染め用1番液》
  • 抽出した赤い1番液②をペットボトルに取る。水と炭酸カリウムの量を減らしあと2回抽出を繰り返す

マニュアル通りに染液を抽出するのにほぼ3日間かかってしまいました。

紅染め(べにそめ)

後から抽出した《紅染め用》抽出液②でシルクの糸を染めます。

  • 染材【緒糸:20g、真綿糸:10g】をぬるま湯に浸す
  • 3回の《紅染め用》抽出液②を合わせて【クエン酸5g】をぬるま湯で溶かし、染液へ静かに入れる
  • 軽く水を絞った染材の糸を染液へ入れて10分間染める。その後、染材を一度取り上げ加温。35℃になったら火を止めて、もう一度糸を投入。約20分間絶えず動かしながら染める
  • 染液から糸を取り出して【2回の水洗い】
  • 【米酢】を少々入れた水に糸を15分間浸して色止めし【2回の水洗い】
  • 陰干しして終了

黄染め(きそめ)

《黄色染め用》抽出液①でシルクの糸を染めます。

  • 染材【緒糸:20g、真綿糸:10g】をぬるま湯に浸す
  • 《黄染め用》抽出液①を沸騰させる
  • 火を止め糸を投入。熱い中に約20分間絶えず動かしながら染める
  • 染液から糸を取り出して【2回の水洗い】
  • 【ミョウバン大さじ1】を熱湯で溶かし【水1000cc】の媒染液に15分浸し、色止め。マニュアルはここまで
  • 《ここで追加作業あり》もう一度煮詰めた染液で染めた後【2回の水洗い】。陰干しして終了

《黄染め》のマニュアル通りでは薄っすらとベージュくらいにしか染まりませんでした。染液に色が残っていたのでまだ染まりそうでした。書いてある通り色止めとして最後にミョウバン液に浸したが、これを【先媒染】と考えた方が染まるのではないか?と考え、ミョウバンの媒染作業後にもう一度染液に浸すことにしました。
染め作業前には染液は多い方がムラになりにくいと思い《黄染め用》1番、2番の抽出液を合わせて染液としましたが薄まっていたようです。水分量を減らすために煮詰めて濃度を上げました。結果、その後は良く染まりました。ミョウバンは「先媒染」とした方が染料の吸収も良いようです。

  • 糸染め終了

    【べに餅: 20g】をいただいたのですが、まずは半分の10gとケチっての体験でした。染材の糸30gに対して染液が少なすぎたので《紅染め》はピンク色、《黄染め》はクリーム色の仕上がりでした。
    しかし、思った以上にキレイに染まったので「シルクの植物染色」1回目にしてはまあまあの出来だったと思います。染料濃度の大切さを痛感して今回は終了です。

  • 参考本:ウールの植物染色

    学生時代の私はウールを中心に化学染料ばかりで染めていたので植物染料についての知識がほとんどありません。卒業後に恩師が『ウールの植物染色』本を出版。それを入手していたのを思い出し、書庫から出して参考に。
    【ベニバナ】についての染色方法の記載もちゃんとありました。

    1. 《紅染め》は高温で染められないので絹のみ可
      (ウールは<べに色>は染まらないようです)
    2. 《黄染め》はミョウバン先媒染
      (キットに添付のマニュアルでは定着のために利用)

    【ベニバナ】染液は煮詰めて濃くする必要もありそうなので、かなり参考になりました。

実生のベニバナ

 

  • べに餅をいただく前に【ベニバナ】の種もSWIさんからいただいていました。
    種子は比較的大きくしっかりとしていたのでプランターと庭に少しずつ撒いてみました。発芽状況は良いのですが、ヒョロヒョロっとしていてあまり順調とはいえませんでしたが、早く暑くなりプランターはほぼ全滅に近く成長をやめてしまいました。
    しかし、直まきしたものは開花に成功。7月20日、とうとう花を見ることができました。
    まだ一輪開花しただけなので染めるなんてことはできませんが、初めて見る花はおもしろい形をしています。色変化も楽しみです。

花びらが少しだけあつまったので染めてみた。

Color Chartカラーチャート

べに餅で『ベニバナ染め』

無媒染

  • 《紅染め》
  • 《黄染め》

※このカラーチャートは私chackeeが染材の仕上がりを目視で数値化し、サイト表示したもので、あくまでイメージです。

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