• Japan Gunma Texstyle / 日本
  • 2023年6月22日

Silkworm Excrement Dyeingカイコが生みだす糸を紡ぎ染める「千美工房」

ちょうど1年前、「上州テキスタイルの旅」という旅行会社の企画ツアーに参加して、群馬の染織や絹産業に関わる施設や遺産群を訪問しました。
3年間のコロナ禍もほぼ収束という状態になってきて旅行は海外へと目を向けはじめたのですが、昨年の旅行でご一緒しその後も交流のある大阪のSWIさんから「もう一度、天蚕の登坂工房さんを訪問したい」と連絡があり、群馬は自動車以外での移動手段が少ないので「私が足になります」とお返事して同行させていただくことにしました。

事前のスケジュール決定のなかで「桐生で座繰りやカイコの糞で染色体験という話がありますが、行きませんか?」との話をいただき興味津々、私は喜んで参加させていただくことにし、もう一人東京のKYBさんにお声がけして、3人で桐生の「千美工房」さんを訪問し、体験させていただくことにしました。


上州座繰り体験

前回ツアーの甘楽町でイベント的な座繰り体験をさせてもらったのですが、糸の撚りかけ方が「ナベのお湯を回転させる」というかなり安易な方法だったので、「実際はどうなの?」と気になっていました。

  • 改良されている<上州座繰り機>。私が昔入手したものはもっと単純な構造
  • 座繰りの心臓部である【鼓車(こしゃ)】ここのかけ方で『糸に撚り』をかける
  • 乾繭を2~4分間煮る。火を止めて30秒したらコップ1杯の水を挿す
  • 火を止めてから1分程度したらぬるま湯の入ったトレイに繭を移す
  • 目的の糸の太さ(繭1粒からの糸約3デニール)分の繭数(ここでは7個、約21デニール)の糸口をとりだし、緒糸部分を取り除いて1本になった部分を合わせて座繰り機にセット
  • 左手で座繰り機を回転させ、巻き取っていく。右手にミゴ箒で水を付けながら湿度を保ち作業をする

座繰り終了後、カセへの揚げ返し作業まで体験。滞在時間の関係で私は染色体験を中心に作業していたのでほとんどの作業はKYBさんがされました。

カイコの糞での染色体験<蚕沙(さんしゃ)染め>

 

  • 「千美工房」さんでは天蚕の糞での染色なども取り組んでいらっしゃいますが、今回は春蚕の盛んな時期で用意しやすい家蚕(普通のおカイコ)の糞でやってみることにしました。
    自宅で500頭のカイコを飼っているSWIさんが糞を用意(千美工房さんも用意していてくださった)、私が学生時代に入手して長年手元にあった緒糸(ちょし、キビソ)のようなスラブ風の製糸をもっていたので、そちらを染材として体験することにしました。

  • 緒糸と思われる絹糸を13gくらいのカセに<3本で40g>
  • 染めムラが出ないように完全に湯通しし、絞ってさばく
  • 【カイコの糞】を【灰汁(灰1kg・水2ℓの上澄み液)】で煮る<沸騰後火を弱めて30分以上>
  • ザルなどの網で漉す<抽出液完成>
  • 染液の半分を【米酢】で中和させ、水を十分切ってさばいて風を入れた絹糸を染液に浸す
  • 糸がからまないように全体を回転させながら染める
  • 手が入れられるようになったら様子を見ながら浸す
  • 染液に浸して冷えるまで2~3時間または一晩置く。温度の下りはじめの30分くらいが良く染まるので上下を返して染むらを防ぐ
  • ここでは【鉄媒染液】を湯に溶かし媒染液を作る。染液を絞り水洗いした糸を浸す
  • 約20分間、媒染液に浸し絞る
  • たまり水ではなく流水で良く洗う
  • 糸カセの場合、各ステップごとに糸をよくさばいて風を入れる
  • 半分残した染液でもう一度(何度か)繰り返し染色作業。
  • 陰干し乾燥させて完了

絹糸の染まり具合はかなり良く、今回は2度染めで終了。
【深緑】【モスグリーン<本来はカイコのモスではなくコケのモス>】【オリーブグリーン】という感じに仕上がりです。
高温と強アルカリ(中和作業を途中まで忘れた)で染めたので少し毛羽立ってしまいましたが、はじめての体験としては楽しく実施できました。

Color Chartカラーチャート

家蚕の『蚕沙染め』

自作媒染液

  • 《鉄媒染》

※このカラーチャートは私chackeeが染材の仕上がりを目視で数値化し、サイト表示したもので、あくまでイメージです。

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