• Texstyle / Dyeing
  • 2023年7月11日

Silkworm Excrement Dyeing天蚕(てんさん)のフンで『蚕沙染め』

先月、桐生の「千美工房」さんで家蚕のフンでの『蚕沙(さんしゃ)染め』を体験し、その後の『登坂工房』さんへの訪問で運よく良質な天蚕のフンをいただいた。乾燥していて混ざり物も少なく、染材としてとても優れている感じがしたのですぐに染めを楽しんでみました。

  • 材料・薬品

    1. 天蚕のフン:登坂工房さんから(100g)
    2. 草木灰汁:2ℓ(ph9)
    3. 米酢:家にある物を使用
    4. 鉄媒染液:クギから自作
    5. 銅媒染液:銅線から自作

    染材(精錬した絹糸)

    1. 緒糸(キビソ糸):20g
    2. 真綿糸:10g
      など

    道具

    1. ホーロー鍋・不織布ネット・加温設備・温度計・保存用ペットボトル
  • 天蚕の幼虫:これの排泄物(糞)
  • 天蚕はクワではなく、クヌギの葉を食べる。クヌギの葉:落葉広葉樹の高木。実はドングリ

染液の抽出

【天蚕のフン: 100g】で約2ℓ弱の染液を作る

  • 【天蚕のフン: 100g】のゴミなどを取り除き、不織布に入れる。
  • 【灰汁: 2ℓ】を火にかけ、70℃~80℃になったらフンの入った不織布を入れる
  • 沸騰を始めたら火を止め、そのまま30分間放置
  • 不織布の袋を取り出す。沈殿物が多い場合は不織布などで漉す。
  • 《2回目の抽出》【天蚕のフン: 100g】のゴミなどを取り除き、不織布に入れる。
  • ほぼ同じ量の抽出が出来上がった

抽出液は一度で半分くらい使用して染色。抽出作業は2回実施。どちらも濃厚な染液と感じるものができあがった。
天蚕のエサはクワの葉ではなく、クヌギの葉。「千美工房」さんで体験した家蚕(かさん)のフンを煮た時は「青っぽい葉っぱような香り?」カイコ飼育した時に感じた匂いではなく「クリの鬼皮をゆでた時のような香り」がしました。

無媒染

抽出した染液でシルクの糸を染めます。

  • 染材をぬるま湯に浸す
  • 【抽出液:約700cc(出来上がりの半分)】に【水:1ℓ】、【酢】を少々入れて中和させ染液を作る
  • 染液を火にかけ、7~80℃位になったら火を止め染材の糸を入れ、まんべんなく浸す
  • 染液に約30分くらいときどき糸を混ぜながら放置。糸を取り出して絞り【2回の水洗い】
    《無媒染》はここまで

鉄媒染(Fe)

自作の《鉄媒染剤》で媒染してみる

  • 【水:1000cc】【鉄媒染剤:30cc】の媒染液で処理
  • 染めた染材の糸を浸ける。約30分したら取り出して水洗い
  • 《2回目》【水:1000cc】【媒染剤:10cc】の媒染液で処理
  • 【3%】と【1%】で黒味の濃さに違いが出た

《鉄媒染》は瞬間的に黒い色への変化しました。自作の鉄媒染の濃度問題かとも思い再度【1%濃度】で媒染作業をしてみたましたがほぼ同じ結果。
ただし黒味の濃さに違いが出た

銅媒染(Cu)

自作の《銅媒染剤》で媒染してみる

  • 【水:1000cc】【媒染剤:30cc】の媒染液で処理(うっすらブルー)
  • 染めた染材の糸を浸ける。約30分したら取り出して水洗い
  • 【無媒染(ブルー)】と【銅媒染(グリーン)】であまり色の変化は見られない。媒染した方が色の定着がしっかりしている感じ
  • 濃くした媒染液に再度浸してみた。ほんの少しだけ黒味(ゴールド)と定着感が増した

《銅媒染》は色に変化はほとんど出なかった。自作の銅媒染の銅の濃度問題かとも思い、もう一度で銅クギなどを投入し濃くした媒染液で作業をしてみた。媒染液の色は濃くなってきたが、ほんの少ししか変化がなかった。
それでもまだ納得できず1週間そのままにしておいた媒染液3%に浸けてみた。

  • 天蚕(てんさん)のフンでの蚕沙染め

    登坂工房さんでたくさんの天蚕のフンをいただいたので、急いで試しの染色をしました。染めの結果が正確なものかわかりませんが、今回の結果をレポートしてみました。
    糸の写真上から

    1. 《無媒染》染めただけで媒染なし。少し白っぽい感じの仕上がり
    2. 《ミョウバン先媒染》色味の揺れは少ないが黄色みの光沢がある
    3. 《銅媒染》色味の揺れは少ないが少しだけ黒味が増し定着感(濃度)がある
    4. 《鉄媒染:3%》黄色みのあるダークグレー
    5. 《鉄媒染:1%》黄色みのあるミディアムグレー

    鉄媒染以外は色味の変化(色の揺れ)がほとんどありませんでした。しかし、媒染液に浸すことで濃度や色素の定着感が違うような感じがします。今回は染めてすぐ乾燥させた比較ですが、『媒染する』か『しない』かで経年劣化や日光堅牢度など染色に重要な《堅牢度》に変化がでている感じがしました。

蚕沙染め③

抽出液を作ること3回目になりましたが、また条件を変えて自作の《鉄媒染剤》《銅媒染剤2》で条件を変更して染めてみることにしました。
染材も毎回20gで行なっていましたが、今回は全て10gで実施しています。

  • 《3回目の抽出》【天蚕のフン: 100g】のゴミなどを取り除き、不織布に入れる
  • 【草木灰汁:2ℓ】前回と同様、沸騰後、30分間抽出
  • 抽出液
  • 今までと同じ方法で30分間の染色

3回目の抽出液をつくる段階で、灰汁のph値があまり高くなかったので全体的に薄い色で仕上がりです。
比較のために5タイプを作成:①《無媒染》、②《銅媒染2》媒染液は木酢酸+銅で作成したが、匂いがかなり残る結果に(陰干し乾燥後は気にならなくなった)。③染色時間2倍+《鉄媒染:5%》④《鉄媒染:5%》+染色+《鉄媒染:5%》⑤《鉄媒染:10%》

  • 天蚕(てんさん)のフンでの蚕沙染め③

    3回目の抽出液をつくる段階で、灰汁のphがあまり高くなかったので薄い仕上がりになってしまった。

    1. 《無媒染》染めただけで媒染なし。薄い感じがするが、前回とほぼ同じ少し白っぽい感じの仕上がり。
    2. 《銅媒染》色味の揺れは少ないが黄色みの光沢がある
    3. 染色時間2倍《鉄媒染:5%》染め時間を長くしたが今回は染液が薄かったため極端な変化はなかった。少し赤味が出た気がする
    4. 《鉄媒染:5%》+染色+《鉄媒染:5%》赤味のあるグレーだが確実に濃い仕上がりになっている
    5. 《鉄媒染:10%》色味が消えて「彩度の低い」ミディアムグレーになった

市販媒染剤で染色

自作の《鉄媒染剤》《銅媒染剤》で媒染してみたが、完成した色に少し不安を感じていました。染液が残っていたので入手できた市販の媒染液で染めてみることにしました

  • 誠和「草木染薬品」鉄媒染液、銅媒染液 ※すでに閉店されてます
  • 今までと同じ方法で30分間の染色
  • 書いてある通り、水洗いしてから染材20%の量の媒染液に浸す
  • 水洗い後、陰干し乾燥。上:鉄媒染。下:銅媒染

市販媒染液で《鉄媒染》と《銅媒染》で染めてみましたが、使用方法に濃度が「染材の重さに対して20%」と書いてありました。自作媒染液での染色では「水1ℓに対して」としてきたので少し誤差が出ているかもしれません。

  1. 《鉄媒染:染材20%》先の《鉄媒染:1%》とした黄色みのあるミディアムグレーとほぼ同じ
  2. 《銅媒染:染材20%》先の《銅媒染》とほぼ同じだが少しだけ黄色く振れている

 

追記:染色トライを何度か行なったが《銅媒染》についてはあまり満足感の得られない結果でした。
そこで無媒染で残しておいた糸を《銅媒染剤3》媒染液は氷酢酸+銅で作成した媒染剤5%に浸し、陰干し乾燥させてみました。
ですが「他の媒染剤と違いが出なかった」という結果になりました。ただ、現時点では堅牢度についての検証はしていないので、時間経過や日光における色変化はあるかもしれません。

Color Chartカラーチャート

天蚕の『蚕沙染め』

自作媒染液

  • 《無媒染》
  • 《ミョウバン先媒染》
  • 《銅媒染》
  • 《鉄媒染:3%》
  • 《鉄媒染:1%》

自作媒染液③

  • 《無媒染》
  • 《銅媒染②》
  • 染色時間2倍《鉄媒染:5%》
  • 《鉄媒染:5%》 +染色+ 《鉄媒染:5%》
  • 《鉄媒染:10%》

市販媒染液

  • 《銅媒染:染材20%》
  • 《鉄媒染:染材20%》

※このカラーチャートは私chackeeが染材の仕上がりを目視で数値化し、サイト表示したもので、あくまでイメージです。

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