- Texstyle / Dyeing
- 2024年5月9日
Cochineal Dyeing赤い染め色をもとめて③カイガラムシの『コチニール染め』
以前に何度も染めたことがある「コチニール」。赤い発色の染料をもとめている中で「コチニールもいつか入手して染めトライをしましょう」と考えていました。日本産のものではありませんが、染め物の中ではかなりメジャーな染料材です。記憶の中では『赤』というより『エンジ』色に染まるというイメージ。コチニールは臙脂虫(エンジムシ)とも云われます。
コチニールは主にメキシコなどの中南米で採取されるオウギサボテンにつくカイガラムシの一種で、体の中にカルミン酸と云われる赤い色素を持っています。ムシなので動物性染料ということでしょうか。乾燥させたものが国内でも流通しています。
そういえば以前、我が家の庭のサルスベリに発生したカイガラムシを潰したら赤い液が出たのを思いだしました。コチニールはそれとは違う種類なのでしょうが、カイガラムシということでかなりの嫌悪感が出てしまいます。しかし、その色素は無害で食品の色付けにも使われるメジャーな着色料です。
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材料・薬品
- コチニール:5g :市販セット品
- フィトカリ:3g:セット同梱品(天然ミョウバン)
- 浸染用錫液、浸染用チタン液:市販媒染剤
- 鉄媒染液、銅媒染液:市販媒染剤
染材(精錬した絹糸)
- 緒糸(キビソ糸):各10g
道具
- ホーロー鍋
- コチニール:5g :市販セット品
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早くからコチニールの染めを考えていたのですが、染まりやすい染料材としてどのくらいの量を用意すればこの染めトライができるのか?わかりませんでした。量と価格で悩んでいる中で、ほかの染織関連グッズの入手を画策していたそのショップにほんの少しのトライグッズ『植物染めセット』の中にコチニールが含まれているのを見つけ、まずはそれを入手してみることにしたのです。
アナンダさんの植物染めセット(ウール・シルク:100g程度染め可)植物染めセット
- コチニール:10g
- フィトカリ(天然ミョウバン):6g
- ミロバランの実:植物繊維用助剤(今回は不使用)
- 染め説明書
コチニールから染液を抽出
セットの説明書に「100g程度染められる」と記述があるので、半量で染めてみます。【コチニール:5g】染料としてはかなり少量で心配です。乳鉢がなかったのでハンマーで細かくして染液を抽出しやすいようにします
- 【コチニール粉末:5g】【ぬるま湯:1500cc】で、80℃~90℃まで温度を上げて30分沸騰させずに煮出す。抽出するという感じではなく、コチニール投入後、すぐに濃厚な赤い染液となりました
- コチニールはキッチンペーパー(不織布)で漉す。今回は抽出1回のみで染めてみます
染液の抽出方法は簡単に、ここで一旦終了
- 染材をテープを色分けして各媒染剤で《先媒染》
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先媒染(フィトカリ/スズ/チタン)※タマネギと同じ
- 【水:1000cc】を加熱
- 80℃程度になったら【各媒染剤:3cc、同梱フィトカリ:3gは熱湯で溶かす】を入れ撹拌
- 染材(絹糸)を入れる
- 弱火でゆっくり温度を上げて30分ほど煮沸(沸騰させない)
- 火から降ろして冷却し絞る
- お湯でよく洗って脱水
コチニール染めは赤色系ですが媒染剤による色の違いを確認するため《フィトカリ先媒染》《スズ先媒染》《チタン先媒染》《銅後媒染》《鉄後媒染》の5つの媒染剤のために染液は同浴で一緒に染めます。《後媒染》グループは30分ほどお湯に浸してから絞っておきます。
- 《先媒染》田中直染料店「草木染薬品」浸染用錫液、浸染用チタン液
- 《後媒染》誠和「草木染薬品」鉄媒染液、銅媒染液 ※すでに閉店されてます
- 抽出液に染材を入れる。80~90℃で30分浸染。媒染剤による色変化を見るために、テープを色分けして5本を一緒に染める。先媒染の染材は赤く染まっているのがわかる
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染液から取り出して水でよく洗って脱水。
コチニール抽出液での染め作業はここで一旦終了。
《先媒染》グループはここで完了。
- 無媒染で染めた染材を各媒染剤で《後媒染》(参考:鉄媒染)。無媒染での染まり具合が悪かったので、染まり具合はイマイチ。
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後媒染(銅/鉄)
- 【水:1000cc】を加熱
- 80℃程度になったら【各媒染剤:3cc】を入れ撹拌
- 無媒染で染めた染材(絹糸)を入れる
- 弱火でゆっくり温度を上げて30分ほど煮沸(沸騰させない)
- 火から降ろして冷却し絞る
- お湯でよく洗って脱水
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赤い染め色の『コチニール染め』
染材10%とかなり少ない染料で染まり具合を心配しましたが先媒染はとても良い結果で発色も良く、染まりやすいことを実感。しかし後媒染の結果はいまいち。絹は動物性繊維なので前処理のミロバラン処理をしませんでしたが、必要だったのかも。染液に助剤として酸(米酢)を入れるべきだったのかもしれません
- 《フィトカリ先媒染》しっかりとした明るい赤。黄色味の少ない赤
- 《スズ先媒染》フィトカリよりかなり明るいピンク
- 《チタン先媒染》エンジがかったピンク
- 《銅後媒染》藤色がかったグレー
- 《鉄後媒染》藤色がかったグレー。銅媒染より赤味を感じる
Color Chartカラーチャート
赤い染め色の『コチニール染め』
「コチニール染め」は化学染料のように簡単に染めトライができました。コチニールは臙脂虫(エンジムシ)とも云われるとおり、黒味のある赤に染まる結果を予想していたのですが《フィトカリ先媒染》はかなり濃厚な赤となりました。《後媒染》用に染めた無媒染の糸の染料吸収はあまり良くなかったので《銅後媒染》《鉄後媒染》は難しい結果となった
市販媒染液
- 《フィトカリ先媒染》
- 《スズ先媒染》
- 《チタン先媒染》
- 《銅後媒染》
- 《鉄後媒染》
※このカラーチャートは私chackeeが染材の仕上がりを目視で数値化し、サイト表示したもので、あくまでイメージです。